【HJ HJ EYE:2】進む農業の法人化、必要とされる人材とは?

人材 コラム

株式会社あぐりーん 代表 吉村康治さん
株式会社あぐりーん 代表 吉村康治さん 全 3 枚 拡大写真
■農業法人は今後も増え続ける

――あぐりーんの利用者数を教えてください。

吉村 延べ件数では全国1600軒の農家をお手伝いしてきました。夏の繁忙期には月に100~150件の新規依頼をいただいています。求職者は月に500人ぐらいで、そのうちの約6割が現職をお持ちの方です。

――すぐにでも働きたいという人は4割ということですね。それは、農業以外の仕事と比べてどんな比率なのでしょうか。

吉村 私の前職の経験を踏まえると、だいたい同じぐらいだと思います。

――現職を持っている人は、主にどのような仕事に就いているのですか。

吉村 色々な方がいらっしゃいますが、IT関係が多いですね。少し体を動かして、自然の中でものと関わりたいという意見をよく聞きます。介護関係も多いです。

――求人募集をする農家は、やはり法人が多いのでしょうか。

吉村 法人と一般の比率はかつて半々ぐらいでしたが、今では約6割が法人です。現在は全国に約1万6000社の農業法人がいるといわれており、安倍政権は今後7年間でこれを5万社まで増やすことを目標としています。組織化を進め、規模を拡大し、加工販売を手掛けるなど、農家の事業範囲が拡大する中で、雇用は増える傾向にあるようです。

――農業法人が行う求人の傾向には何か特徴が?

吉村 正社員はあまり増やせませんので、組織を拡大するうえでの核となる人材を若干名探すケースが多いです。農家としての経験は問われませんが、農業に可能性を感じ、いろいろなことに主体的に取り組んでいける人材が理想ですね。

――農家に就職してもデスクワークを仕事にしていいわけですが、メディアで露出されているスローライフのイメージが実像をぼやかしているのかもしれませんね。

吉村 弊社の求人への応募者のなかで、リーダー的な立場に付きたいと考える方は13%程度しかいません。半分くらいは、自然の中で黙々と農作業をやることに憧れを持っているようです。これからの農業はやり方次第で面白くなると思いますし、会社もどんどん大きくなっていきます。その中心で働くということは、好きな人にはやりがいがあると思うのですが、なかなかマッチングが難しいところです。

■就職活動の選択肢としての農業を増やす

――「農家のおしごとナビ」は好評を得て、ビジネスとして成功と言えると思います。

吉村 農業は生き物が相手の職業で、就業時間が不規則ですし、一般の仕事よりも休みが減ります。さらに、農業を志すということは、今までの生活をすべて捨てて、新たな土地に身を置くことです。これを一生の生業にしていただくためには、まだまだ必要なことがあると感じています。

――それはたとえば、人材の質を上げてマッチングの可能性を増やすということですか。

吉村 それもありますし、もっと早い段階から農業という選択肢を知ってもらうことが必要です。大学で就職活動を始めたときに、農業を選択肢に考える方は多くありません。ですが、三十代、四十代になって振り返ると、世の中にはいろいろな仕事があって、もっと早く気づいていればと思うことがあります。現職の農家には小さい頃に祖父の仕事を見たり、農業体験をしたことがきっかけとなり、この仕事を選んだ方が多いと聞きます。そのような場所を作っていくことが、この先の農業人口を増やすことにも繋がるのではないでしょうか。あとは、受け入れ側の農業法人の雇用環境を整えていくサポートもより力を入れ、農業界に入ってきた人材が長きにわたり活躍できるようにしていきたいと考えています。


<Profile>
あぐりーん 代表取締役 吉村康治(よしむらやすはる)さん

明治大学経営学部卒業。大手人材派遣会社「スタッフサービス」で、地方支店の立ち上げや新規部門のマネージメント業務に携わる。09年6月に株式会社「あぐりーん」を設立し、同年12月には農業分野に特化した求人サイト「農家のおしごとナビ」の運営を開始する。


■取材を終えて
私たちは往々にして「農業VS他産業」という構図をつくり、農業が産業の一部でないような理解でいることがある。しかし、「中小企業」というくくりにあてはめるならば、農業は切り離されるべきものではなく、ほかの産業と横並びの存在であり、抱える問題や未来の展望などに共通部分が多いことがわかる。「農家はデスクワークのできる管理職を求めている」という吉村さんの話からは、農家もまた数多くある「スモールカンパニー」のひとつであり、そこには他の産業からの人材やマネージメントの流入は不可欠であると実感させられる。農業人口の激減、後継者の不在、耕作放棄地、TPP・・・と問題が山積している産業である農業だが、中小企業という視点をもってのぞめば、解決の糸口は意外に多いのかもしれない。
(HANJO HANJO 編集長・加藤陽之)


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