ドラマ『火花』(又吉直樹)に会社員の人間関係を見る

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ミュージシャンやプロスポーツ選手と匹敵する人気職業となった00年代のお笑い。その分だけ競争率は激化、資本主義的になった状況は芸人間の関係性を変えていく
ミュージシャンやプロスポーツ選手と匹敵する人気職業となった00年代のお笑い。その分だけ競争率は激化、資本主義的になった状況は芸人間の関係性を変えていく 全 3 枚 拡大写真
 昨年、お笑い芸人の又吉直樹が芥川賞を受賞し累計発行部数251万部のベストセラーとなった小説『火花』(文藝春秋)がドラマ化された。放送枠はNetflixというインターネットの有料動画配信サービス。昨年、日本で一番売れた小説のドラマ化がテレビ局ではなくNetflixだったことは多くのテレビ関係者に衝撃を与えた。

 本作は若手芸人の徳永(林遣都)と、徳永が心酔する先輩芸人の神谷(波岡一喜)という師弟関係にある二人の芸人の物語だ。物語は2001年から始まり、一話で約一年が経過していく。そのため、00年代を「お笑い」という側面から切り取った青春ドラマとなっている。

 総監督を廣木隆一が務め、沖田修一、白石和彌といった映画監督が各話の監督として参加している本作は、ドラマというよりは500分弱の映画を見ているかのような完成度を誇っている。一挙全話放送で途中にCMもないため、映像の緊張感が並はずれており、ここまで硬派な作品作りは、地上波のテレビでは難しいだろう

 芥川賞を受賞した純文学というと、ついつい堅苦しく見えて、小説が好きじゃない人には、むずかしい世界ではないかと敬遠したくなってしまう。しかし、本作はとても読みやすく、かつ青春を描いた物語として普遍的な仕上がりとなっている。

 それはドラマ版も同様で、夜の歓楽街を呑み歩きながら「お笑い」について語り合う徳永と神谷の姿は若手芸人でなくても、多くの人々が若い頃にそういう時代があったなぁと懐かしく思うだろう。そんな普遍的な青春像のバックボーンとして配置されているのが、00年代のゲーム化したお笑い業界の姿だ。

 00年代のお笑いは作りこまれたコント番組がどんどんなくなっていき、代わりに観客からの支持を競うトーナメント型の番組が増えていった。同時に芸人の地位はプロスポーツのアスリートのような尊敬を受ける存在へと変わっていき、若者にとってはミュージシャンやプロスポーツ選手と匹敵する人気職業となったが、その分だけ競争率は激化している。

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《成馬零一/ドラマ評論家》

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