経済発展に湧くベトナムでの日系企業の挑戦

海外進出 コラム

浅井崇氏(インディビジュアルシステムズ代表取締役)
浅井崇氏(インディビジュアルシステムズ代表取締役) 全 1 枚 拡大写真
 7月30日、ベトナム最大の商業都市ホーチミン市の中心地に、初の日系百貨店としてホーチミン高島屋がオープンしました。開店一週間が経っても客足は途切れず、こちらもベトナム初となる地下鉄の工事も相まって周辺道路は大渋滞を起こしています。

 ホーチミン市では、すでに韓国系のダイヤモンドプラザ、マレーシア系のパークソン、ベトナム最大手不動産会社ビングループのビンコムセンターなど近代的な百貨店が展開していますが、近年稀に見る日本ブームの中での高島屋のオープンは、新し物好きのホーチミンっ子の関心を一手に集めているようです。店内の作りはまさに日本の百貨店と同じで、新規進出のブランドやユーハイム、神戸風月堂など日本人にはおなじみの店舗も多数見受けられました。

 一昨年からイオンモールなど郊外型の大型ショッピングモールの出店が相次いでおり、休日には車やバイクに乗り込み、家族総出でウインドーショッピングに出かける光景が当たり前のものになっています。一方、今回の高島屋の出店は都心部であり、平日の仕事帰りの人たちにも受け入れられることになるでしょう。ベトナム人の生活はまた一段と変化していくはずです。

 高島屋の例に漏れず、近年、ベトナムでは日系の小売や流通、飲食店の展開が目立ちます。この流れは、チャイナプラスワンの名のもとに日系企業の進出が増加したことによるものと考えられています。

 2011年頃から始まった中国からのリスクヘッジの動きは、2013年のアベノミクスの円安誘導によって加速されました。また、2015年末に発足したASEAN経済共同体(AEC)の影響も多分にあると思われます。中国一国の市場においては、通貨や輸出入の制限などもあって周辺国とのシナジーを見込んだ展開は取りにくかったのですが、ASEANへの進出はASEAN経済共同体を意識して全域での活動を求められています。そのため、輸出加工を目的とした製造業であっても、ASEAN域内での販売を織り込んだ進出に舵を切り始めています。

 その結果、わずかこの3年間だけでも、日清食品、キューピー、サッポロビール、キリン、サントリーなど多くの飲料・食品メーカーがベトナムの市場を賑わすようになりました。そしてその牽引力になったのが日系の小売業で、ファミリーマート、ミニストップ、イオンが加速度的にベトナムでの展開を進めています。また、セブンイレブンをはじめとする競合他社も新規進出に名乗りをあげていますし、もちろん、それ以前からベトナムに根を張ってきた味の素、エースコック、大正製薬、ロッテなども先行者としてシェアを伸ばしています。

 今後はこれまで以上にASEAN域内でのヒト・モノ・カネの動きが活発になることでしょう。そのときに、ベトナムから発信される日系企業の商品が大きなトレンドを作ることができたなら、シュリンクせざるを得ない日本市場依存から脱却した日本企業の新たなるグローバル市場への挑戦が始まるのかもしれません。そしてその道程で日本がベトナムやASEAN各国とのより強固な関係を構築することができれば、いよいよかつての日本ブランドの復活が見えてくるのではないでしょうか。

●浅井崇氏(あさいたかし)
神戸市出身。花園大学卒業後、ハノイ総合大学語学留学。02年、インディビジュアルシステムズ株式会社を設立。同社は日本から受注するシステムのオフショア開発が主事業。東京と関西に営業拠点を置き、ベトナムでは日系進出企業向けのSI事業を展開。創業時からベトナム人技術者の日本語教育に注力、プロジェクト管理者が日本語に対応できるのが強み。ホーチミン兵庫県人会の世話役、ひょうご国際ビジネスサポートデスクホーチミンなどの役職も兼務する。

★毎週月曜発行★
編集部オススメ記事をピックアップ!
HANJO HANJO メールマガジン登録はこちら

《浅井崇氏》

編集部おすすめ

特集

PCサイトを見る