製造業のデジタル化と3Dプリンター

IT業務効率 コラム

稲田雅彦(株式会社カブク代表取締役CEO)
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 16年9月、世界最大のコングロマリットである米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、欧州の金属系産業用3Dプリンターメーカー2社を約1500億円で買収しました。金属産業用3Dプリンターがいよいよ本格的に製造業で利用されつつあります。

 3Dプリンターというと、4~5年前に家庭用3Dプリンターが出てきたとき、その物珍しさから話題になったことを記憶されている方も多いでしょう。しかし、「仕上がりが良くない」「精度が出ないし遅い」「3Dデータが作れない」といった評判もあり、ここ数年でトーンダウンしてしまいました。

 一方、産業用の3Dプリンターは、当初は試作品用だと思われていましたが、2014年に技術特許が切れ始めたこともあって、高性能化、高速化が進み、実用レベルの技術として活用され始めています。日本のメーカーも参入し、いよいよ製造業への導入が進んでいます。

 3Dプリンターの特徴は、「足し算」型の技術にあります。これまでの製造業は切削加工など、「引き算」型の技術でした。しかし、3Dプリンターは複雑な造形物も積み重ねて造形することで、一体で作れるようになったのです。一体成型で作れるということは、ムダな材料やパーツの数を減らすことに繋がります。

 カブクは大手自動車会社の方々と共同で3Dプリント電気自動車を開発しました。デジタル化によるデザインや部品低減、試作の高速化により、大幅な時間短縮を成し遂げています。以前だと試作金型や、金型と付随する技術を合わせると、1~2年近くかかるところが、わずか2ヶ月で世に出すことができました。結果、トータルでの時間もコストも削減が可能になりました。

 3Dプリンターはインプラントなどのオーダーメイド医療の分野や、航空宇宙の分野で最終製品製造にも使われています。金属製品が作れるだけでなく、金型自体も3Dプリンターで製造され始めています。さらに、海外では巨大なクレーン車のような3Dプリンターによって、家や橋まで作られ始めています。

 冒頭でご紹介させていただいた米GE社の3Dプリンターメーカーの買収が、こういった時代の流れの上にあるのを感じていただければ幸いです。

 家庭用3Dプリンターが一気に登場し始めたときは、その特性がちゃんと伝わらずトーンダウンしてしまいましたが、製造業のデジタル化、IoT化という流れの中で、重要な製造技術の一つとして注目されつつあるのが今の3Dプリンターの流れなのです。


●プロフィール
稲田雅彦(いなだまさひこ)
株式会社カブク 代表取締役CEO。「モノづくりの民主化」を掲げて2013年、株式会社カブクを設立。3Dプリンティングによるデジタルものづくりのマーケットプレイス「Rinkak」を立ち上げる。トヨタ自動車、Hondaのパーソナルモビリティへのカスタマイズパーツの提供を行うほか、グローバルでのデジタル工場向けクラウド提供など、デジタルものづくり分野でさまざまな企業と協業し、高い注目を集めている。東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。大阪出身。

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《稲田雅彦》

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