ワイン造りと人材育成の意外な共通点

人材 コラム

井上雅夫(株式会社オリーブプロジェクトJAPAN 代表取締役/ワイン醸造家)
井上雅夫(株式会社オリーブプロジェクトJAPAN 代表取締役/ワイン醸造家) 全 3 枚 拡大写真
 まもなく、日本でも楽しみにしている人が多いボージョレ・ヌーボーの解禁日がやってきますね。これからここでは、ワイン造りに見る人材育成のヒントについてお話ししていきます。

 ワインの醸造と人材育成がなぜ結びつくのか疑問に思われる方は多いかもしれませんが、実は驚くほどに「ワイン」と「部下」は似ているのです。

 16年9月に上梓した『ワインづくりの心得を生かす 部下を酸化させない育て方』(実務教育出版)にも書きましたが、部下とワインの最大の類似点は、育てた人の手を離れた後も「熟成(成長)」し続けるということです。

 一般的に日本酒やビールといった酒類は、美味しさがピークになった状態で瓶詰めを行います。そこで熟成は完全にストップされるため、比較的安易にピークに近い状態を食卓までキープすることができます。しかし、ワインは違います。

 ワインは瓶詰めをした後も熟成を続けるため、管理の仕方によって味や風味が大きく異なってしまうのです。理想的な環境に置かれれば素晴らしい熟成をしますし、放置されたり過酷な環境におかれたりすれば、酸化してしまうこともあります。人間も同じです。どんなに一生懸命育てたとしても、合わない環境におけば「酸化」してしまうことがあります。

 酸化させないために必要なことは、手を離れた後もときどき様子を見てあげることです。「大丈夫か」と味を見てあげる。そうすれば、香りが立っているか、味に異変がないか、早い段階で気がつくことができます。もしそこで違和感を発見したら、すぐに軌道修正することできるでしょう。

 驚くことに、ワインは熟成の度合いに応じてどんどん味がかわります。同じぶどうで同じ時につくったものであっても、時間が経てば別物のように味や香りが変わるのです。だからたとえ途中で熟成が止まり、思ったような変化を遂げていなかったとしても、環境を修正すれば再び美味しいワインへと熟成していきます。

 それは、部下も同じ。優秀だったはずの部下の覇気がなくなってしまったとしたら、今の環境が合っていないだけかもしれないのです。軌道修正してあげれば、再び成長を続けるはずです。

 実は、ワイン造りは誰にでもできます。材料を準備して、手順通りに作業をすれば出来上がってしまうのです。ただし、「美味しいワイン」をつくろうとするとこれは簡単ではありません。人材育成も同じでしょう。入社した社員が自分の下に配属されれば部下にはなる。しかし、優秀な部下になってもらうには、上司がときどき手入れをしてあげなければなりません。

 育った部下を「熟成」させるためには、独り立ち後もときどき様子を見てあげることが大切なのです。


●プロフィール
井上雅夫(いのうえまさお)
株式会社オリーブプロジェクトJAPAN 代表取締役。現在は埼玉県秩父市のワイナリー「兎田ワイナリー」でワインを醸造している。大手旅行会社勤務、百貨店ニューヨーク支店長を経て、カルフォルニアワイナリーSycamore Creek Vineyards代表取締役社長に就任。その後、盛田甲州ワイナリーで取締役営業本部長を務めたのち、コンサルタントとして独立。現在は醸造を続けるかたわら、経歴を生かした「人材育成」のノウハウを企業や各種団体に提供している。ゴールデンゲート大学大学院修了(MBA)。職場心理コンサルタント、産業カウンセラー。

《井上雅夫》

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