3Dプリンターが物流を変える!?

IT業務効率 コラム

稲田雅彦(株式会社カブク代表取締役CEO)
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 米国の大手物流会社UPSが、シンガポールにオンデマンドの3Dプリンター工場を2016年内に開設すると発表しました。このニュースにはどういう意味が込められているのでしょうか?

 これまで工業部品は、どこか特定の工場で生産し、それを全世界へ届ける必要がありました。しかし、現地で生産できれば物流コストを最小コスト化できます。産業用3Dプリンターなら、小ロットの製品を最適な個数で、短時間で生産できます。回転率の低い部品の在庫を持っておく必要もなくなり、デジタルデータを送るだけで必要な製品を必要とする場所で作ることもできます。そうなると、輸送コストが大幅に削減できます。産業用3Dプリンターの普及と高性能化はものづくりの地産地消をもたらすと言えるのです。

 配送だけをやっていればいい時代ではなくなりつつあり、UPSは自己の物流網を活かせるデジタル製造サービスにトライし始めているのです。

 また、通販サイトのAmazonは、注文を受けると、3Dプリンターを搭載した配送トラックで、注文者に近い配送センターから製品を製造しながら配送する技術の特許を出願しています。注文を受けたら作りながら届ける、もしくは必要とする場所へ行って製造するということが可能となり、在庫を持たず、注文から商品が届くまでの時間を大幅に短縮しようというのです。今はまだ産業用3Dプリンターは大型でスピードも遅いですが、この数年でどんどん小型化され、高速化されていくと思いますので、トラックに産業用3Dプリンターが搭載される日も遠くないでしょう。

 こうした地産地消型のものづくりは、産業用3Dプリンターの発達と製造業のデジタル化の恩恵を受けて、いよいよ始まりつつあります。

 さらにAmazonは、米国内の宅配業務を自社でまかない、これまで宅配を委託してきた大手配送業者との契約を解除することを検討しているという報道が先日ありました。年間売上の10%以上を配送コストに当てていたAmazonにとって、これが実現すれば年間11億ドルのコスト削減が見込めるとのことです。物流会社も今までの競合と異なる業界のプレイヤーの新規参入リスクがあり、様々な業界で選択淘汰が、デジタル化の波に乗って起こりつつあります。

 カブクも全世界のデジタル工場と連携しており、素材、設備、場所、稼働状況などからAI(人工知能)が最適な工場を選び出して生産し、お届けすることが可能で、これは物流の最適化に繋がります。

 モノを大量に輸送していた時代が終わるだけではありませんが、物流会社も多様な外部環境から製造業への業務拡張も行っているのです。

 多様なプレイヤーを巻き込みながら製造業のデジタル化やIoT化が世界中で進行しつつあり、まさに第4時産業革命が大きなうねりとして起こり始めています。


●プロフィール
稲田雅彦(いなだまさひこ)
株式会社カブク 代表取締役CEO。「モノづくりの民主化」を掲げて2013年、株式会社カブクを設立。3Dプリンティングによるデジタルものづくりのマーケットプレイス「Rinkak」を立ち上げる。トヨタ自動車、Hondaのパーソナルモビリティへのカスタマイズパーツの提供を行うほか、グローバルでのデジタル工場向けクラウド提供など、デジタルものづくり分野でさまざまな企業と協業し、高い注目を集めている。東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。大阪出身。

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《稲田雅彦》

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