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3Dプリンターをバックに、その普及が「町工場のものづくり力を高めることにも期待しています」と語る丸さん
3Dプリンターをバックに、その普及が「町工場のものづくり力を高めることにも期待しています」と語る丸さん 全 3 枚 拡大写真
 “ものづくりニッポン”を支えてきた貴重な存在でありながら、衰退が危惧される町工場。彼らが今、新たなパートナーにベンチャー企業を迎え、プロトタイピングや製品の生産を担当することに新たな活路を見出そうとしている。こうした動きを加速させるかのように10月4日、東京都板橋区が全国の町工場、ベンチャー企業、研究者を集めた「いたばしベンチャーフォーラム」を開催した。

 同区の委託事業として同フォーラムを運営したのは、ベンチャー支援などの事業を展開するリバネスだ。同社代表取締役CEOの丸幸弘さんが目指すのは、世界の半導体産業を発展させたシリコンバレーのビジネスモデル。そこで欠かせないのが「町工場とベンチャー企業の出会いです」と意気込む。このコラボには一体どのような可能性があるのだろうか?

■ベンチャー企業のアイデアと町工場の技術力のコラボ

――「いたばしベンチャーフォーラム」は参加者が300人を超え、大盛況だったと伺っています。ベンチャー企業が町工場に関心を持ち始めている、そんな機運を感じますね。

丸 フォーラムでは青色LEDの開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二先生をお招きしました。というのも、中村先生はアメリカでSORAAというベンチャー企業を立ち上げ、太陽光に近い紫色のLEDを開発して、普及拡大に力を入れています。そして実は、SORAAの日本法人を置いたのが板橋区。なぜビジネスの中心地である丸の内ではなかったのか。それは板橋区に光学系の優良企業が多く、大学があり、なによりも光学系の町工場が集積していたからなのです。

 ベンチャー企業には、解決したい課題とそのためのアイデアはありますが、それを具体的に製品化するための技術やノウハウを持っていません。製造を大手メーカーに発注すると多額のコストがかかりますが、ベンチャーキャピタルから資金を調達しようと考えても、成果が出ないうちは難しいでしょう。

 しかし、町工場なら、案件によっては大企業より安価に、ベンチャーのニーズにより合ったものが作れる可能性があります。例えば、大手メーカーからは100万円の見積もりが返ってきたとして、それが町工場なら半額以下でできてしまうかもしれない。これはベンチャー企業にとって大きな魅力です。

――近年では町工場が持つ高い技術力にも注目が集まっているようです。

丸 “ものづくりニッポン”を支えてきただけあって、町工場の技術力は素晴らしいです。例えば、ベンチャー企業の「WHILL」は電動車イスを国内はもちろん、海外でもヒットさせています。これを開発できたのは、墨田区にある町工場の浜野製作所が持つ精密な板金・金属加工技術や墨田加工のプラスチック成形技術のおかげです。

 同じくベンチャー企業の「チャレナジー」も、台風による風力発電の実証実験を開始しました。そこで使われている羽根のない次世代風力発電機も、開発には町工場の技術力が欠かせませんでした。「未来機械」が開発したソーラーパネルの掃除ロボットも、町工場とのコラボで1人でも持ち運べる軽さを実現し、清掃コストも5分の1に抑えることができます。

■考える町工場として“知の製造業”を目指す

――「いたばしベンチャーフォーラム」の参加者が集まれば、ベンチャー企業が商品企画部門を、大学が研究・開発部門を、町工場が製造部門を担うことで、ひとつのメーカーのようにふるまえそうです。

丸 まさにそうだと思います。その中で、町工場の方々にお伝えしているのは、かつて大企業の下請けで得た苦い経験を教訓として生かすこと。取引先の数を絞ってしまうと、仮に1社の取引先を失ったときに大きな打撃を受けてしまいます。大口の受注も、結果的に取引先の数を絞ることにつながりますので、できるだけ避けるほうがよいでしょう。

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《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

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