【中小工場のIoT化最前線:2】LCCを実現、武州工業の戦略とは?

IT業務効率 コラム

動作回数カウンターの、動作をカウントする部分には市販されているiPodTouchを利用している。動きを計測する各種センサーは搭載されているし、無線でデータを飛ばすこともできる携帯端末を流用するのは合理的だ
動作回数カウンターの、動作をカウントする部分には市販されているiPodTouchを利用している。動きを計測する各種センサーは搭載されているし、無線でデータを飛ばすこともできる携帯端末を流用するのは合理的だ 全 3 枚 拡大写真
■ローコストの実現は、筋の通ったコンセプトから

 クラウド上で動作している武州工業独自の生産管理システムは、BIMMS(Busyu Intelligent Manufacturing Management System)と名付けられている。この“Web上で生産管理する仕組み”を、同社では二十年近く前から取り入れてきた。

 IoTの導入にあたっては、多くの場合は予算的な縛りが二の足を踏む理由になる。しかし武州工業では、それだけのコストをかけてでも全体のシステム化を積極的に推し進めている。同社代表取締役社長の林英夫氏によると、こうした施策はすべて“低コスト化”と“価格競争力の獲得”を目指した上でのことだった。

「日本でLCC価格を実現したかったんです。海外に行ったりせず、地元に仕事を残したかった」

 自動車産業ではLCCと呼ばれる“その部品をもっとも安く作れる国”での調達価格が、どこの国で生産される部品に対しても適用される。武州工業は地域に根ざした操業を続けて雇用を守りつつ、海外の格安な製品と競争してきた。その中でコストカットでLCCとの労務費の差を埋め、価格面でLCCと渡り合うための工夫を重ねた先に、IT化の推進があったと林氏は話している。

「日本は今、時給千円ですが、かの国ではそれが五十円、百円という世界。十倍、二十倍の労務費の差があります」

 同社の生産ラインは、“一個流し”という生産方式(セル生産方式)を採用している。少品種大量生産に向く“ロット生産”に対して、多品種少量、また変種変量のニーズに柔軟に対応できるとされる生産方式だ。それ自体がコスト削減のための工夫、選択とのことで、その生産性を最大限に上げるためITシステムが必要だったという。

 同社の一個流し生産では、一つのラインを受け持つ職人が製造工程だけでなく、材料の調達から検品(品質管理)、出荷管理までを行う。林氏によれば、これは「ラーメン屋の店長のように、自分が作る製品のすべての段階で責任を持つ」ためのものとのこと。大企業の大量生産工場では困難であろう、中小の規模だからこそ可能な方策と言えるだろう。

 例えば、職人が検品結果をタブレット端末に入力することで、そのデータはBIMMSに送られ、リアルタイムで統計データとして閲覧できるようになる。生産ペースを把握している職人自身が調達や検品という“ラインの出入り口”まで管理することで、それらの作業にまつわる「待ち時間」のような無駄を減らすことにも繋げているのだ。

 武州工業の取り組みを知るにつけ、IoTは大きな目標を達成するための手段、道具の一つであることを思い知らされる。方針が適切であれば、テクノロジーは確実に生産性や品質の向上に役立つのだ、とも。

 派手やかな最新技術は、テクノロジー好きな人を無条件で追いかけたくさせるし、苦手な人は最初から遠ざけてしまいがちだ。しかし本当に必要なのは、やみくもに導入を急ぐことでも、むやみに拒絶することでもない。その技術で“何を知り”、“どのように活かすか”という、冷静で堅実なビジョン、大きな目標を立てられるかどうかということではないだろうか。コンセプトの大切さ、と言い換えてもいい。

 コンセプトがはっきりしているからこそ、そのため必要なものが判別でき、「ではそのデータが集められるようにしよう」と、IoT化のポイントが見えてくるのではないだろうか。武州工業の取り組みからは、そうした教訓を得られるように思われるのである。

 次回の記事では、武州工業が持つコンセプトについて、そしてBIMMSというシステム自体とその今後の展開について、もう少し深く読み解いていきたい。

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《久保田弥代/HANJO HANJO編集部》

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