【中小工場のIoT化最前線:3】稼働状況も職員の体調も見える化!

IT業務効率 コラム

一個流し生産の様子。効率的に配置されたミニ設備の内側を、人が動いていくことで工程を進めていく。このレイアウトも担当の職人に任されており、ここは職人にとっての「一国一城」となっている
一個流し生産の様子。効率的に配置されたミニ設備の内側を、人が動いていくことで工程を進めていく。このレイアウトも担当の職人に任されており、ここは職人にとっての「一国一城」となっている 全 3 枚 拡大写真
 LCCの低価格製品と競争していくこと、そのためのコストカットではあったが、それ自体が目的にはなっていないことが林氏の言葉から分かる。会社としての目的は、根ざした地域の雇用を守り、地域の中で会社が存続していくことだ。

 そのためには価格競争に勝ち抜く必要がある。一個流し生産の採用も、業務のIT化も、“会社が地域で生き続けられるように”という、同社が最初から持っているコンセプトを守るためのものなのだ。このブレない意識こそが、会社自体の歩みを確固たるものにしているように思われた。

 “コンセプトが肝心”という考え方は、会社の運営、指針という大きなスケールと同等に、日常の業務レベルにまで“スライド”させていけることにも触れておきたい。それは、林氏の思考プロセスの中に表れている。

 最初の大きなコンセプトのために「コストカットによる低価格化により、日本生産でもやっていけるようにする」という次なる目標が生まれ、そのための選択が一個流し生産方式の採用。そこからさらに、「日々の業務の効率化、生産性アップ」というまた次の目標が生まれ、IT化、IoTの導入という新たな解が見えてくる。

 こうした中目標、小目標もコンセプトになりえるのだ。そしてそれは、なんのために“カイゼン”を重ねていくのかを常に意識させてくれる。

 多くの中小企業の経営者にとって、IoTは縁遠いものだろう。それが自社に何をもたらすかは漫然としている。武州工業がなぜIoT導入で成果を出しているか。それは、さまざまなカイゼンの段階におけるコンセプトがブレないからだ。だからこそ“より良い道筋”を見つけて歩んで来られているのではないかと、取材を通じて感じた。

■BIMMSが会社のあらゆることを“見える化”していく

 武州工業のコンセプトは、BIMMSというシステムの中でも、またブレを見せない。

 雇用を守るということは、つまるところ“人を守る”ということに繋がる。だからだろうか。BIMMSには出退勤管理というシンプルなグループウェア的機能もあるのだが、その画面には「出勤」「退勤」というボタンはない。あるのは、「本日の体調」を五段階で示すボタンだけだ。従業員がボタンを押せば出勤していることは分かるので、別の情報を入力する画面で代替したというわけだ。それが、従業員の体調を知らせるためのボタンだということに、人を守るコンセプトの徹底が感じられる。

 この機能は職人のその日の体調と成果を結びつけて分析し、効率の変動を把握するという活用へとつながっている。運用を重ねてビッグデータになった時、面白い分析結果が出るのではないかと、林氏は楽しみにしているそうだ。

 従業員の側としても、出勤退勤ボタンを操作するという、いわば“単純作業”で済まされるよりも、ずっと人間的なコミュニケーションが出来ていると感じることだろう。それは、従業員のやる気を引き出す。誰だって、企業の中の歯車のように見られるよりも、人として遇される方が、気分よく働けるに違いない。作業の効率化というだけに留まらない設計思想が、BIMMSの中には息づいているのだ。

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《久保田弥代/HANJO HANJO編集部》

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