~中小工場のIoT化最前線:3~稼働状況も職員の体調も見える化!

IT業務効率 コラム

一個流し生産の様子。効率的に配置されたミニ設備の内側を、人が動いていくことで工程を進めていく。このレイアウトも担当の職人に任されており、ここは職人にとっての「一国一城」となっている
一個流し生産の様子。効率的に配置されたミニ設備の内側を、人が動いていくことで工程を進めていく。このレイアウトも担当の職人に任されており、ここは職人にとっての「一国一城」となっている 全 3 枚 拡大写真
 現在、武州工業では社内で持っていたシステム用のWebサーバを、AWS(Amazon Web Service)を使って完全クラウドへと移行しようとしている。武州工業自身もAWSへと移行したBIMMSを使うが、このシステムを他の企業にも外販していく考えだという。

「一個流しや、それを実現するミニ製造設備、BIMMSというのはうちだけのノウハウ。財産だから外には教えませんと言ってきたんですが、そういう鎖国をやめて、外に出していくことにしたんです。それがBIMMS on AWSという形に繋がっていきました」

 前回の記事で触れた動作回数カウントのIoTシステムが、一セット5万円程度で実現可能だったのは、BIMMSというバックボーンがすでにあったから。いち企業が単独でIoTシステムを開発することを思えば、BIMMSを利用する方が安上がりで済むのは間違いない。「BIMMSは毎日棚卸しをしているようなもの」という林氏の話からすれば、その部分だけでも使えるようになれば、様々なシーンで商品・在庫管理に役立てられるだろう。

 それにしても、どうして方針を転換して「開国」へ舵を切ったのか。

「ある時、若い職人が『自分が定年になる時に、武州工業は百周年ですね』と言ったことがありました。その先まで会社が続いていなければ困るとすれば、そのときうちは何を作っているんだろう、日本では何を作っているのだろうという疑問が生まれました。それで、日本はもっと直近に、危機が迫ってるんじゃないかと思えてきて、『自分たちさえ良ければいい』じゃいけないなと考えたわけです」

 自社は安泰だったとしても、周辺の経済活動が落ち込んでしまっては元も子もない。特に製造業は、材料の仕入れや部品の納入など、企業同士の結びつきが強い面がある。周辺が地盤沈下する中で自分たちの足下だけを気にしていてもしょうがない、ということだろう。

 IoTは見えなかった部分を“見える化”することに長けたツールだ。今まで、見えていた部分だけで考えていては行き届かなかった工夫やアイデアが、より深化していくことが期待できる。ブラックボックスに光を当てるIoTをうまく使えれば、今までは思いもよらなかった、新しい工夫や効率化が進められるだろう。

■IoTテクノロジーの導入、どんな心構えが必要か

 ITが身近にある業種を除けば、IoTの導入といってもピンと来ずに、二の足を踏むこともあるかと思われる。ここまで見てきた武州工業の事例から、そんな導入時の心構えが読み取れるのではないだろうか。

 ひとつはコンセプトで、“何のためにそのシステムを導入したいのか”という目標・目的の部分。そして、もう一つは効率化するにはどこを“見える化”できればいいかという着目の部分だ。

 武州工業では“地域に根ざし雇用を守る”という大目標があり、そのために一個流しという生産方式に着目した。そして、一個流し生産の効率を最大化する目的のために、Web生産管理に着目し、BIMMSという独自のシステムを作り上げる。やがて、BIMMSの働きをさらに高めるために機械の稼働率に着目し、そのカウンターとしてIoTを導入した。

 このように、武州工業の事例では、すべてがとても整然と繋がっている。この中のある段階一つでも、テクノロジー導入で成功することが出来れば、企業の恩恵は大きなものになる。整然とした繋がり、矛盾のなさ、スムーズさこそが、武州工業が成功を収めている最大の秘訣なのだろう。

 ただ、拙速にテクノロジーを導入することが正しいとも言い切れない。ミニマムなシステムで充分のはずが、大規模なシステムを導入して持て余すなど、拙速なITシステムの導入が空回りに終わった事例は、枚挙に暇がない。目標・目的と、そのために必要な部分への着目。それを充分に見極めてからでないと、空回りになってしまう恐れがある。

 これらは、IT事業者という見地からも考えるべきポイントとなるだろう。IoTをどのように自社の事業に活用すれば分からない中小企業は多い。そうした企業側の悩みに寄り添い、その業種に、業務になにが必要なのかを、丹念にすくい上げていく必要があるということだ。

 武州工業が成功している理由のひとつに、BIMMSをはじめとするシステムを、すべて内製していることがある。IT技術者を内部に置いているからこそ、製造の現場を知った技術者が、必要なものを理解した上でシステム開発に取り組むことができている。同業者のみならず、IT事業者の目線で見ても、武州工業の事例はたいへんに示唆に富んでいる。

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《久保田弥代/HANJO HANJO編集部》

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