【日本経営品質賞:1】理論と現場からCSに迫った先に見たES

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敢えて店長を置かないことで、“心温まるカーライフ”を社員一人一人が考える環境を作っている
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【記事のポイント】
▼セクショナリズムが起きるのは、それを防ぐための目標がないから
▼具体的な成果の上がる経営品質の取り組みから、社員にその理念を広める
▼プロジェクトの企画開発に社員を巻き込み、彼らの自己変革を促進する


■事業承継を機に取り組んだ経営改革

 少子高齢化にともなうマーケットやリクルートの変化、さらには社員満足度(ES)が注目される中で、企業経営に柔軟性に富んだ対応が求められている。そのモデルケースとして経営者の注目を集めているのが、日本経営品質賞の受賞企業だ。2017年2月22日には東京のイイノホール&カンファレンスセンターで、2016年度受賞組織への表彰が行われている。

 日本経営品質賞は顧客視点から経営を見直し、経営革新を進めるモデルとしてふさわしい組織を表彰するもの。2016年度は3社が受賞している。その中でも中小企業部門として受賞した組織のひとつが、福井県でカーディーラーを手掛ける株式会社カワムラモータースだ。

 1964年に創業のカワムラモータースでは、本田技研工業の販売店網「Honda Cars」に参加しており、かつてはその顧客満足度(CS)調査の指標を重視していた。先代社長の時代には、調査において系列別で全国1位になったこともあるという。その方針を転換したのは、2006年に現代表取締役社長の河村将博氏が事業を承継してからのことだ。河村氏は当時のことを次のように振り返っている。

「先代から事業を引き継いだ当時、現場は忙しくて終始バタバタしていましたし、離職者もそれなりの数ありました。CS調査の結果についても、それが本当に優れているという実感がなく、もっと他に大切なことがあるのではないかと考えたのです」

 このような状況の中で、まず注目したのが営業部と整備部の間にある壁だったという。これを解決には両者が共同で取り組めるような理念を、なるべく分かりやすいコピーで掲げる必要がある。顧客満足度の向上につながるものとして、河村氏が提言したのが“トラブルフリーのクルマを創ろう”というミッションだった。

 カーディーラーにおける付加価値とは、気持ち良く、迅速に、できるだけ安く車をメンテナンスすることだと考えられてきた。しかし、そもそも車が壊れるということ自体が、顧客にとっては満足度を損ねる事態だろう。ディーラーがお客様の車を管理している以上、その故障を未然に防ぐことはできないのだろうか?

 もし、それを実現しようとするなら、定期的な乗り換えとメンテナンスが必要となる。それは、営業部と整備部が共同で取り組める目標として、最適なものに思われた。

■ITの導入で新たな顧客満足度を生み出す

 事業承継において新たな経営方針を打ち出し、それをもって経営品質の向上を目指そうとした河村氏。その過程においては、経営品質向上プログラムを勉強していたことが役に立ったという。

 日本経営品質賞委員会が編集している「日本経営品質賞 アセスメント基準書」を読み解く上で、河村氏は顧客本位、社員重視、独自能力、社会との調和の4つが基本理念であると捉えている。そして、これらはすべて繋がっており、どれか一つを追及すれば、後の3つも付いてくると考えたのだ。

 その上で、河村氏はまず“トラブルフリー”という独自能力の向上に努めた。理由は自分一人でも取り組めるから。社長を継いでまだ間もない自分がベテランの職人に経営品質という理念を説くには、明確な実績が必要になる。それを、河村氏はトラブルフリーを実現するための、仕組みづくりに見出そうとした。

 以前から顧客管理にファイルメーカーを活用していた河村氏は、これを発展させた独自のシステム「ClearBox」を開発する。これは顧客の車の1台1台について、エンジンオイル、オイルエレメント、バッテリー、ワイパーラバー、タイヤ、スタッドレスタイヤ、ブレーキオイル、ブレーキパッドといった消耗部品の状態を管理するもの。車検のように2年に1回といった規定のスケジュールにとらわれず、個々の車に合ったタイミングでメンテナンスを行うためには必要不可欠な仕組みだった。

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《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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