利は仕入れにあり

制度・ビジネスチャンス コラム

北岡修一(東京メトロポリタン税理士法人 統括代表)
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「利は仕入れにあり」という言葉がある。

 これは商売の鉄則を表す言葉だ。商売と言えば、近江商人の商売上手は有名であり、その近江商人が最も活躍したのが、大阪の商人の町、船場(せんば)である。この商人の町、船場では、「売りは番頭に任せてもいいが、仕入れは旦那がする」と言われている。

 一般的に商売はいかに売るか、どれだけたくさん売るかということであり、売りの方にスポットがあたる。当然、仕入れより売りの方が大事だ、と思われている。したがって、その大事な売りの方を、力のある者がやった方がいいということになる。仕入れなどは良い仕入れ先さえ決めておけば、誰がやっても同じと思われがちだ。

 ところが商人の町船場では、違うのだ。

 売りはNo.2である番頭以下の者に任せ、仕入れはTOPである旦那がやるのだ。なぜ、誰でも同じと思われる仕入れの方を旦那がやるのだろうか?

 船場は商人もプロなら、買う方の客も言ってみればプロだ。ガンガン値切ってくる。私を含めた東京人は、値切るのが本当に下手だなと思うが、関西人はよくそこまでできるなというくらい、値切って買っている。本当に関西の人はえげつないなと思うくらいだ(笑)。それでも笑顔で商売が成立しているんだから、阿吽の呼吸というか、ゲーム感覚みたいなものなんだろう。

 そんなに値切ったら儲からないのではと心配するが、まるで心配する必要はない。十分儲かっているのだ。なぜなら、それこそ旦那が、思いっきり安く仕入れているからである。

 番頭以下が、店先でお客さんとの掛け合いで、値切られることはハナから想定済み。そういう掛け合いこそが商売を盛り上げることを、十分見越しているのである。店頭で見ても安い。さらにそれを値切って買えた、ということで、お客様は大満足で、また来てくれるのである。

 この一連の流れを見れば、いかに仕入れが大事かとわかるだろう。いくら値切られても、利益が出るくらいの水準で仕入れをすればいいのである。だからそれをやるには、相当のテクニック、駆け引きが仕入に必要なのだ。これができるのは豊富な経験がある旦那しかいない、ということである。

 これは別に船場でなくても同じこと。商売の鉄則である。

 ドン・キホーテやユニクロなどでも、安く売っているように見えるが、決して利益率は低くない。営業利益率はドン・キホーテで6%以上、ユニクロなどは10%前後を上げているのである。やはりその秘訣は、仕入れや製造コストにあるのだろう。

 売値はお客様に見えるので、買ってくれるかどうかの重要な判断要素になるが、仕入れは実はお客様からは見えない。仕入れが高いからいいものだ、安いから悪いものだ、と言って買ってくれるわけではない。

 お客様が、その値段で満足して買うと言ってくれるのであれば、仕入れは関係ないのだ。いくらで仕入れていてもいい訳である。当たり前のことではあるが・・・。

 お客様は、余程偏屈でなければ、「これはいくらで仕入れたの?」なんて聞かない。だから、そこで利益が確保できるのだ。いくらで仕入れをしたか、いくらで作ったのかが、利益を上げる肝なのである。

 売りで利を上げるのではなく、仕入れで利を上げるのだ。

 そして、さらに値引かれることなく高く売ることができれば、さらに利益率が上がる。仕入れさえ安くできていれば、安く売ろうが高く売ろうが、どっちにいってもいいのだ。これが、利益率の高い会社になる秘訣である。

 仕入れ、コストをいかにコントロールするかに経営の醍醐味があると、かの京セラ創業者稲盛和夫氏も言っている。是非、「利は仕入れにあり」を実践して、儲かる会社になって欲しい。


●北岡修一(きたおかしゅういち)
東京メトロポリタン税理士法人 統括代表。25歳で独立以来、税務会計業務を基本としつつも、経営診断、人事制度の構築支援、システム導入支援などコンサルティング業務にも携わってきた。現在は「会計理念経営」を掲げ、「会計を良くすると、会社が良くなる!」をモットーに、誠心誠意、中小企業を支援している。主な著作に『社長の「闘う財務」ノート ~ 社長の数字力が会社を鍛える』(プレジデント社)がある。


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