事業承継の2017年問題:1  M&A成功のポイントはどこにある?

人材 コラム

日本M&Aセンター 常務取締役 総合企画本部長 大山敬義氏
日本M&Aセンター 常務取締役 総合企画本部長 大山敬義氏 全 4 枚 拡大写真
■譲渡先をどのように見つけるか

 では、後継者問題を抱える中小企業がM&Aを考えた場合、まずどのようにして譲り受け企業(譲渡先)を探せばいいのだろうか。一般には、会計事務所、取引銀行など金融機関、そして日本M&Aセンターのような中小企業専門のコンサルティング会社だ。

 ただし、会計事務所でM&Aのノウハウを持っているのは業界最大手クラスの事務所で、中小企業にはハードルが高いし、そもそも事業承継を目的としたM&Aができるとは限らない。取引銀行に、中小企業のM&Aの専門家や部署があれば、相談に乗ってくれるだろう。中小企業専門のコンサルティング会社なら、事業承継のためのM&Aに精通しており、買い手企業の情報も多く集まってくる。

 大山氏によれば、中小企業の事業譲渡は、売り手1に対して買い手は10くらいの割合だという。つまり、M&Aに対する偏見や先入観を持たなければ、中小企業の事業承継のスキームとしてかなり有効といえる。

 しかし、注意点もある。10:1で売り手市場だが、赤字企業は当然買い手を見つけるのが困難だ。よい相手がいないと、えり好みをしていたり、経営が厳しくなるまで頑張っていると売れる会社も売れなくなる。日本M&AセンターでもM&Aが成立するまでに2年前ほど(成約率80%)かかっているという。事業譲渡をしたい年が決まっているなら、そこから3年前には相手探しを始めてほしいと大山氏はいう。相談にきたときは、「売り時、つまり適齢期を過ぎた状態という会社が少なくない」(大山氏)そうだ。

■よい相手を見つけるために経営状態の分析を行う

 また、中小企業の決算は税務会計が基準となっているため、決算の数字と経営実態が一致していないことが多い。上場企業は財務会計基準がしっかり決められているので、企業の経営状態や実力が数値化されている。少なくとも同じものさしでの評価が可能だ。中小企業は、決算を見ただけではその経営の状態や実力はわからない。したがって、買い手を探す前に自社の経営状態の分析、客観的なデータ作りが欠かせない。

 M&Aでは、会社の資産、負債、キャッシュフローなどを分析し、さらにブランド価値や営業状態といった数値化しにくい部分も加味して、譲渡の評価額を算出する。条件があえば、屋号や従業員もそのままにすることもできる。買い手の目的は、老舗ブランド、ポートフォリオの拡張、エリア展開、事業拡大などだ。

 日本M&Aセンターの事例でいえば、札幌の電気通信工事業の会社が釧路のビルメンテ・警備の会社(後継者不在)を業容拡大のためそのまま譲り受けたり、岡山県のメッキ会社が石川県のメッキ業を、愛知県の砂糖精製販売の会社が神奈川県の和菓子製造販売の会社を譲り受けたりしている。

 大山氏は中小企業が事業承継でM&Aを考える場合は「会社の売り買いではなく『結婚』のように考えたほうが成功する」という。相談は、投機的なM&Aではない知見を持った専門家やコンサルタントがいいだろう。儲けるための株券の売買ではなく、自分が娘のように育てた会社の引き受け先、事業を任せられるパートナーを探すようなもの。したがって、金額にこだわるより、相手がどれだけ自分の会社を理解しているか、どれだけ意識の共有ができるかを重視すべきだ。



width=

★毎週月曜発行★
編集部オススメ記事をピックアップ!
HANJO HANJO メールマガジン登録はこちら
  1. «
  2. 1
  3. 2

《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

編集部おすすめ

特集

PCサイトを見る