世界に向けた和食や鮨の認定制度、食のアイデンティティーは守られるのか?

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世界に向けた和食や鮨の認定制度、食のアイデンティティーは守られるのか?
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 各国が自国の食文化を世界へ発信する食のグローバル化が進む中、自国の料理の認証制度を設けて“お墨付き”を与え食のアイデンティティーを保護する動きが強まっている。日本は和食の料理人の認定制度を展開。イタリアやタイは、料理法に加え自国産食材を使うことも定義し、農産物の輸出拡大も狙う。一方、かつお節や干しシイタケなど独自の食材を使う和食では、食材輸出に検疫などの壁が立ちはだかる。
すし業界では料理人を認証
 和食の海外普及を進める農水省は2016年から、日本料理の知識を習得した外国人シェフを認定するガイドラインを制定した。日本人の料理長や料理人がいる海外の日本食レストランで働く、実務経験者が対象だ。2年程度の経験者に与える「ゴールド」など3段階に分け、国が民間団体を通じて認定する。これまで90人が認定された。

 すしの業界団体「全国すし商生活衛生同業組合連合会(全すし連)」は国に先駆け、10年から海外の職人を対象に「すし知識海外認証制度」を展開。調理技術だけでなく、調理衛生の点で優れた職人を審査し、これまで欧州や米国などで800人を認証した。
生食文化否定 歯止めが重要
 同連によると、海外の推計5万戸のすし店のうち、95%以上が生食文化のない国の出身者が調理しているとみられる。生食調理を理解していない店もあり、業界は「生食を危険とみる国から、日本文化を否定される可能性もある」として、すし精神の継承も視野に認証制度に乗り出した。国際すし知識認証協会の風戸正義代表は「海外での生食否定に歯止めをかけたい」と強調する。

 和食の海外普及には大きな課題もある。日本は和食を通じて日本食材の輸出促進につなげたいと考えているが、日本独自の食材が相手国の検疫を通過するのが容易でないという現実がある。

 15年にイタリアで開かれたミラノ万博では、老舗の和食料理店が現地で和食を振る舞った際、干しシイタケの検疫手続きに予想以上に時間がかかり、現場がひやひやした事例もあった。農水省によると、和食に欠かせないかつお節では、発がん性物質「ベンゾピレン」の含有量が欧州連合(EU)の基準値を超えるとして、一時は外国産が使われたこともある。

 供給量不足で輸出ができないケースもあるなど、食材輸出には課題も多い。
日本市場狙う タイ・イタリア 自国産食材 利用促す
 世界に食文化を広めようと狙う海外各国は、自国産食材の輸出拡大も狙う。タイ商務省輸出振興局は06年から国外のタイ料理店の認定制度を始め、これまでに世界で1300店を認定した。

 タイらしい雰囲気やサービスの提供、香り米やタイの調味料を使って本場の料理を再現していることが条件だが、狙いの柱に「タイ食材の輸出促進」を挙げ、政府一丸で食材輸出を促進する。

 在日イタリア商工会議所も11年から、日本国内のイタリア料理店を対象に「イタリアホスピタリティー国際認証マーク(MOI)」の認証を開始した。現在日本国内だけで約80店舗を認証している。イタリアやEUの産地保護制度の認証を受けた食材の使用も認証項目に定めている。

 「納豆スパゲティ」など“日本風イタリアン”が広まっていることに危機感を抱いたことが背景にある。ナポリ市のピザ職人団体も認証制度を立ち上げるなど、「国のアイデンティティーを守りたい」(同商工会議所)という機運が高まる。

 MOIを取得する東京都港区のレストラン「ラ・コメータ」の鮎田淳治オーナーシェフは「イタリアとのつながりが証明でき、信用も得られる」と価値を実感する。同店はイタリア料理には現地の食材が欠かせないとして、積極的に利用する。「和食も同様で、日本の味を形成する上で重要な食材は、日本産の食材を使ってもらうべきだ」(鮎田シェフ)と食材輸出の重要性も指摘する。 (川崎学)

世界に羽ばたく 和食 日本産 輸出にどうつなぐ 認証が鍵 壁は検疫

《日本農業新聞》

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