医療現場で活用されるVR、その最先端/国際モダンホスピタルショウ

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国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 准教授 杉本真樹氏
国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 准教授 杉本真樹氏 全 3 枚 拡大写真
【記事のポイント】
▼レントゲン撮影(二次元)からVR(三次元)への流れ
▼VRの効能のひとつは手術前にシミュレーションを行えること
▼若手医療従事者の教育にもVRは用いられている


 2017年7月12日~14日に東京ビッグサイトにて開催された「国際モダンホスピタルショウ2017」。病院をはじめ、保健・医療・福祉分野における最新の機器、製品、システム、サービスなどを展示する国内では最大級のイベントだ。今回の取材では、特にIT・ICTの利用で効率的な業務遂行を可能にする施策について2回に分けて関連するセミナーを紹介する。

 今回は、セミナー『医療現場の意識改革をもたらすVRモバイルワークステーションとYOGA BOOK』(国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 准教授 杉本真樹氏)より、医療現場で今どのようにVRが活用されているかについての要約をお届けする。

 ゲームなどのエンターテイメントを中心に目覚ましい進歩を見せるVR(仮想現実)だが、実は医療の現場でも活用されていることをご存知だろうか。医師による手術のシミュレーションや教育だけでなく、VRの持つ“錯覚させる”という特徴を活かし、患者の治療(主にトラウマやPTSDなどの精神面)や、幻肢痛(事故等で失った体の部分の痛み)などの治療にも応用されている。

■レントゲンで足りない情報はVRで補う

 定期検診やケガをしたときなど、病院でレントゲン撮影してもらった経験のない人はいないだろう。フィルムに写されたレントゲン写真は不調箇所を調べるのに便利なものだが、フィルムという平面に写されている以上、二次元の情報にすぎない。またデジタルカメラを用いて撮影された画像も、PCやタブレットのディスプレイ上では二次元の情報という点でレントゲン写真と大きくは変わらない。

「この腫瘍の深さは?」「この血管の裏側はどうなっている?」といった情報は、二次元情報からではなかなか読み取ることができない。そこで登場するのがVRだ。例えば患者のCTスキャン画像から立体的な像を作り出し、その立体の世界の中に入り込むことがVRなら可能というわけだ。VRを使えば臓器の状態や血管の配置などが手に取るように分かるようになる。このことについて杉本氏は「本物を知るためには回り込む必要がある」と話す。

■手術の安全性を高めるためにVRでシミュレーション

 ではそのVRは、実際にどのように医療現場で活用されているのだろうか。杉本氏は「腹腔鏡手術」を例に挙げて説明を行った。“腹腔鏡手術“とは体に小さな穴を開け、そこに腹腔鏡と呼ばれる小型のテレビカメラを挿入し、モニターを見ながら行う手術のこと。患者の体への負担が小さく、術後の回復も早いとされている手術だ。しかしこの腹腔鏡手術は従来の切る手術(開腹手術)に比べ、臓器損傷の確率が2倍にもなり、最悪の場合死亡するケースも報告されている。

 これらの事例について、杉本氏は「モニターに映し出された画像はあくまで二次元であり、切り取られた視野のなかで手術を行うことになる。そのため、見えていない部分については空間認識の欠如が起こってしまう」と解説。また「患者一人ひとりによって臓器や血管の位置は異なるため、VRを使って事前に臓器・血管の位置関係を把握する必要がある」と続けた。

 また手術の前日には関係者を集めてカンファレンスが行われるが、前日のカンファレンスでは思い違いや記憶違いなどが起こる可能性もゼロではない。「そのため手術の1時間前に手術室にPCを持ち込み、最新のデータ取り込んだVRを使って手術のシミュレーションをしておくことで安全性を高めることができる」とVRの有用性を強調した。


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《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》

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