地域創生におけるファシリテーターの役割とは? (後編)

インバウンド・地域活性 コラム

DBICディレクター渋谷健さん。「事業に脚本を」をコンセプトに、関東と九州の2拠点を軸に全国各地で活動を展開し、主に産学官民金言連携やオープンイノベーションをテーマとした行政政策や企業戦略の立案・実行に関わっている
DBICディレクター渋谷健さん。「事業に脚本を」をコンセプトに、関東と九州の2拠点を軸に全国各地で活動を展開し、主に産学官民金言連携やオープンイノベーションをテーマとした行政政策や企業戦略の立案・実行に関わっている 全 2 枚 拡大写真
 地域創生において「ファシリテーター」の存在がクローズアップされている。広義では会議等における「議事進行役」を意味する言葉だが、いまが正念場の地域創生の現場では、その言葉以上の役割を果たすことが求められている。インバウンドや地域おこしなど数多くの課題にファシリテーターはどう向き合えばいいのか? これまでに地域創生のいくつもの場所で活躍してきた渋谷健氏の講演から、地域創生におけるファシリテーターの役割の本質を考えてみたい。

*本稿は6月26日に行われたDBIC(デジタルビジネス・イノベーションセンター)における講演「ファシリテーション入門:地方創生の現実を事例に」を文責=編集部で採録したものです。


■イノベーションへの「つながりと流れ」を創る方法論

 地域創生で何か新しいことを始めるときは、利害関係者が増えて不確実性が非常に高まります。それを解決するには多くの人と対話をするほかありません。対話はチャンスを見つけるということでもあります。

 そして小手先だけの効果を狙うことがないよう全体を見渡すことが必要です。関係する人のバックグラウンドを含め、そのとき・その場に必要なことを提供していくことが求められます。しかし全体を捉えるというのはとても難しいので、可能な限りシンプルに要点を捉えることが重要です。過去の積み上げだけではなく、あるべき未来の姿を描き、そこから新しいやり方を考えることが必要になります。今あるものをどうするかではなく、どうなりたいかというところから考えるのです。

 地域創生の成果を創り出すためには、ひとの“つながり”が不可欠です。そして成果に向けた“いい流れ”を創ることが必要です。そのためにファシリテーターがやるべきことは3つあると思っています。まずは関係性の構築、つまり人と人の間の関係性を作ること。信頼できない人とは仕事はうまく進みません。次は気づきの創出。何をやりたいのか、どうすればいいのか、何が可能なのか明確にします。そして最後に事業化し、社会に事業を通じて価値を提供していきます。

 関係性の構築は人がつながるための場をファシリテーターが創ることからスタートします。最初はただ集まるだけで、関心のある地域も分野もバラバラの状態です。そこで特定の地域か、特定の分野に関心のある人たちをつないでいきます。そうすると議論が深まります。

 ただし、特定の地域への関心だけで集まると、地域の課題はたくさん共有できるけれど、専門性がなく解決策が見いだせない自治会的な状態になります。逆に特定の分野だけの関心で集めると、専門知識は高いけれど実行性がない業界団体的な状態になってしまいます。この状態から事業を創るには関心のある地域と分野がクロスさせていきます。「この地域の課題を解決するために、この分野の技術を活用しよう」というような合致点を創るわけです。

 合致点が得られたら次にやるべきは気づきの創出です。そのためにはまず、チームビルディングを行います。合致点が得られたとしても、集まった人は年齢も職業はバラバラであることが普通です。このままでは議論へとつなげませんので、まずは共通の目標を定め、その実現のための役割分担やスケジュール、予算を決めていきます。そうすることでチームが形成され、プロジェクトが立ち上がります。

 生まれたばかりのプロジェクトは困難だらけです。やってみて初めて分かることもたくさんあります。そのまま放っておけばチームがバラバラになってしまうこともあります。そこで最初はチームメンバーに対してファシリテーターが日常的に関わり、コーチングをして、チームとして育てていくことが必要になります。ただしファシリテーターがメンバーとあまり接点を持ちすぎると今度は過保護になってしまい、チームが動かなくなります。そこでプロジェクトが一巡したら、徐々に関与の度合いを下げて、代わりにチャレンジのハードルを高くし、主体的にチームが活動していく状態を創っていきます。するとやがて自立した事業をやれるだけの力を持ったチームができあがります。

 ここまできたら事業化です。このときファシリテーターはそのチームが持っている社会的インパクトと、そのチームに対する自分自身の影響力を見極めることが必要です。そして社会的インパクトがあり、ファシリテーターとして影響力が発揮できるチームとの事業に最優先で取り組みます。社会的インパクトはそれほどではないけれども影響力を発揮できるのであれば、そのチームとは事業的な提携関係を結ぶことが有効です。一方で社会的インパクトがあるけれども影響力が発揮できないチームはリスク要因になり得ます。そこで関係性は保ちながら、状況を注視していくことが必要になります。社会的インパクトもなく影響力も発揮できないのであれば、無理にリソースは割かず、何かあったら対応するというスタンスで十分です。こういった整理を行っていくことで、「秘密基地」が40社もの新規創業を生み出したように地方創生の成果を創り出していくことが可能になります。これまでになかった新しいやり方で地域の課題を解決し、価値を創出するイノベーションが可能になるのです。


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《HANJO HANJO編集部》

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