旅館業の人材不足をどう解決すればいいのか?/第2回 働き方改革「10のキーワード」

人材 コラム

業務改革を推進し着実に業績を上げている旅館「鶴巻温泉 元湯 陣屋」(写真提供:鶴巻温泉 元湯 陣屋」)
業務改革を推進し着実に業績を上げている旅館「鶴巻温泉 元湯 陣屋」(写真提供:鶴巻温泉 元湯 陣屋」) 全 5 枚 拡大写真
★旅館業の人材不足をどう解決すればいいのか?
第2回 課題解決編:宿泊業の働き方改革「10のキーワード」

 サービス業の人手不足が社会的な問題となっているいま、宿泊業、中でも旅館業における人手不足は深刻な問題となっている。インバウンドの増加により日本国内の旅行消費が増加している中、ハイシーズンでも人手が足りないために部屋を開けられず、泣く泣く宿泊を断るというケースも出てきており、今後廃業に追い込まれる旅館は増える可能性が高い。その一方で業務改革を推進し、着実に業績を上げている旅館もある。この違いは一体何なのか。旅館業は今何をすべきなのか? 旅館業界の人材不足の現状とその解決策について3回に分けて、リクルートワークス研究所の城倉亮氏に話を聞く。第2回は課題解決編として「宿泊業の働き方改革『10のキーワード』をおおくりする。

■宿泊業の働き方改革「10のキーワード」

ーーリクルートワークス研究所では、宿泊業に特化した「働き方改革」を提言されていますね。

 10のキーワードを作って提言をまとめました(図1)。(1)タスク再構築、(2)IT・テクノロジーの活用、(3)安定稼働、(4)サービスの価格反映、(5)情報公開による誘客プロモーション、(6)賃金の引き上げ、(7)労働時間の圧縮、(8)人材ポートフォリオの構築、(9)プロ人材の育成、(10)企業間・地域間のネットワークです。

 人をなかなか採れない状況から抜け出すという観点と、従業員に効率良く働いてもらうという観点。この2つの点を実現しながら収益を改善させている先進的な事例を取りまとめると上記の10のキーワードが出てきます。私たちはこれらのキーワードに対応した取り組みをやってもらうのが良いと考えています。

 人手不足を解決するための対応を見ていくと、人事面での局所的な対応でしのいでいる会社が多いように感じています。賃金を上げることと労働時間を減らすことが代表的でしょう。しかし局所的な対処では、実はあまりうまくいかないというのが事例調査の中からわかってきました。

 パフォーマンスをあげている会社は、最終的には賃金の引き上げを実現しています。計画的に営業時間を区切るような施策で安定的な営業稼働を実現し、労働時間やコストの削減を行いながら売り上げを下げずに利益を上げる。人事的な取り組みだけでなく業務や経営面と一体にして改革を行うことが宿泊業において重要だといえます。経営改革を行う場合には、働き手がどういうプロセスで働くのかという業務面と、待遇などの人事面を一体で変えていかないとうまくいかないのです。

■若い世代を採用するためには情報マッチングが必要

ーー若い世代は地方のサービス業の代表である旅館業に魅力を感じているのでしょうか? 若者を引き寄せるには何が必要なのでしょうか?

 内閣官房が2014年に行った調査ですが、東京在住の方で将来的にUターン・Iターンをしてもいいと考えている人が約40%いるというデータがあります(図2)。ただしよく数字を見ると今後1年以内に移住を考えている人は2.7%しかいません。潜在層はあるけれどアクティブにUターン・Iターンをしようとしている人はそれほど多くないということです。この潜在層に対して情報を積極的に開示することによるアプローチを取ることが必要です。

 移住したい理由を見ると、農業や林業といったいわゆる“スローライフ”の実現を考えている人が多いのですが、その一方で自分の出身地だからとか、自分に合った生活スタイルを送りたいといった、他の理由でUターン・Iターンを検討する人もいます。彼らに対してしっかりとリーチすることが必要です。

 ただし彼らの多くはUターン・Iターンをしたときに働き口が見つからないのでは、という懸念をもっています。旅館業の求人はあるわけですから、うまくマッチングできていないというのが現状でしょう。地方自治体でもUターン・Iターンのイベントに力を入れていますが、働き口の需要と供給をうまくマッチできる仕組みを作ることで、移住の促進もできるのではないでしょうか。

 旅館業や宿泊業に即していえば、「地方の魅力」というよりも都心に比べて遜色ない仕事があって、継続的なキャリアを身につけることができる状況を準備しておく必要があると思います。当地での経験が次の場所で活かせる、いわゆるキャリアパスになるような仕事を提供できるかどうか。東京や大阪などの大都市でなくても魅力的なキャリアを身につけられるということを見せていけば、旅館業に魅力を感じる人は増えると思います。


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《HANJO HANJO編集部》

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