地域を“アゲる”観光行政、“サゲる”観光行政

インバウンド・地域活性 コラム

兵庫県姫路市「書寫山圓教寺」ハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地としても知られる(画像提供:姫路市)
兵庫県姫路市「書寫山圓教寺」ハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地としても知られる(画像提供:姫路市) 全 3 枚 拡大写真
 日々全国を歩く中、近年、様々な場面で地域間の格差が拡大していることを痛感しています。自治体の規模や財政もさることながら、地域の活性・不活性に直結する地域間競争を勝ち抜く力の差、その基礎となる意識や意欲の面でも差は目に見えるかたちで表れてきています。

 明確なビジョンや戦略に基づき、着々と結果を出す地域ではすでに民間企業レベルの意識とスピード感を持ち、切れ目なき仕掛けと効果的プロモーションを行い、地域にヒト・モノ・カネ、情報やチャンスを呼び込む一方、自分たちがどこに向かうべきか、何をすべきかが見えていない地域では未だ、戦略なき20世紀型モデルから抜けきらないでいます。その言い訳は大抵「資源がない」「人がいない」「金がない」ですが、そのセリフは今できること、やるべきことを全てやり尽くしたものだけが言えるエクスキューズです。

 今回はこの地域観光行政の格差について考えます。

■観光行政の課題と今、求められるべき役割

 まず観光行政の役割とは何かですが、その主語となる「地方公共団体」の役割は地域観光のプレイヤー(民間事業者)の側面的支援であり地域の環境整備ですが、その手足となり施策を実行する組織はこれまで「観光連盟・観光協会」に委ねられてきました。地方創生総合戦略の中ではこの二者の能力が問われており、その機能、役割を担うものとして新たに日本版DMOという組織の設立も各地で始まっています。

 いずれにしても観光行政がまず行うべきは地域の知名度・認知度アップであり、そのためのシティセールス・プロモーションですが、多くは効果的な情報訴求ができないだけでなく、それと両輪であるはずの地域の受け入れ態勢は後回しとなっています。結果として話題のスポットがあっても地域の中で回遊を促せず、施策に投入した金と手間の割に観光消費額は低空飛行ということも少なくありません。

 観光開発の基本はまず第一に客を惹きつける地域の魅力・価値の発見であり、その発信により訪れる人の受け皿づくりで、その両方が伴ってはじめて観光地としての発展の道筋が引かれます。

 しかし、そのイロハのイ、現在の市場ニーズに照らした地域資源の発掘や評価ですらほとんど行われず、観光協会のホームページやパンフレットの多くは30年前と同じ画像や文言を平気で載せています。

 ですが多くの場合、価値は普遍ではなく、人やその時の気分等によっても異なる相対的なものです。地域資源の評価も時代により刷新が必要です。また知名度・認知度のアップには情報接触度のアップが欠かせませんが、そのためには他と決定的に差別化された地域の価値・魅力の明確化が必要となります。

 ターゲットや情報拡散のタッチポイントの絞り込みしかり。メディア活用やプレス対応、素材提供、情報接触を観光消費へ誘導する検索誘導や効果的なコミュニケーション手法など、地域観光の課題を挙げればキリがありません。

 またこれは地方の小さな町村でもきちんと対応している地域もあれば、政令市であっても全く理解していない地域もあります。観光行政の優劣は規模の大小の問題ではないのです。

 今回はその中で一つ、今すぐにでも取り組める地域の課題を先進的な地域の取り組み例にフォーカスしてみましょう。


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《水津陽子》

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