グローバル流通が不可欠、これからの自動車リサイクル/会宝産業、近藤会長

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国際リサイクル教育センター
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1969年の創業以来自動車リサイクル業を営む会宝産業。従来の解体業から脱し、グローバルな静脈産業と称するビジネスモデルを創(つく)り出した近藤会長に、具体的な取り組みと今後の展望について話を聞いた。


◆なぜ中古部品輸出ビジネスは仕組み化しづらいのか?

自動車リサイクル(解体業)を生業として稼働している企業は日本全国で3,600社ほどある。この業界は、家族経営的な中小零細企業が多い。元々は車体の鉄くずが収益であったが、アルミ、銅、鉛、白金、プラスチックの資源、更に中古車のエンジンや部品をリサイクルするようになっていった。一方で、輸入国側も同じように個人経営のような形が多く組織化できていない。販売方法や決済方法がそれぞれ異なる。つまり、売り手と買い手との人間関係に依存する形となる。

言い換えれば信頼関係の構築ができていないと、ぼったくり、詐欺行為等のトラブルに巻き込まれる。特に海外へのビジネス展開となるとお互いの不透明さを取り除くのは難しい。業界全体のビジネスマナーも低いといわれている。このように仕組み化がしづらいビジネスであった業界に大きな変革をもたらした企業がある。


◆自動車リサイクル業界全体の発展が必要

会宝産業は年間で約1万4000台の自動車を解体して、国内だけでなく海外85か国の国々へ中古エンジンを主力とした自動車中古部品の供給実績を持つ。社名につけた「宝に会う」という思いでもののありがたさ、中古自動車のエンジン、部品などを余すことなく活(い)かすリサイクルシステムをグローバルに広めている。地球環境に貢献することを最大の目標にしている企業だ。

日本は、使用済みの自動車に対するリサイクル率は95%となり欧米にも負けない世界一の自動車リサイクル国となった。一方で、発展途上国ではリサイクルができず廃車が放置されている。廃車で一番多いのは日本車だ。鉄が錆びて、オイルが地面に流れ出し環境が汚染されている。

「国内だけというビジネスをしているだけでは生き残れません。グローバルに考えていく必要があります。また売れるものだけ売るのではなく、最後まで面倒をみる必要があります」(近藤会長)。更に「グローバルにやった方が地球環境に貢献でき儲かる仕組みも作れます。すでに第1歩を踏み出しています」と語る。

その1つが、RUMアライアンスだ。同業の仲間同士でのアライアンスとなる。1社では地域を超えた大きな取り組みができないが、それぞれが結束して世界レベルのインパクトを与えることを目指している。世界へ一緒に中古部品を出していけるつながりとなる。2017年10月に東京と大阪で説明会を行い、日本全国各地域で地球環境とともに歩むビジネスの取り組みに賛同した企業を集めている。近藤会長は「100社ほどの同業者が競争ではなく協調する仕組み作りをしていくと自(おの)ずとみえてくるものがあります」と指摘する。


◆グローバル流通が最大の差別化

近藤会長は「グローバルビジネスを推進していけることが、同業他社との大きな差別化になっています」と指摘する。会宝産業はグローバル規模の自動車リサイクルネットワークを構築するため、他社にない強みを作り上げた。3つの大きな仕組みがある。1つ目が「PAS777」と呼ばれるエンジン性能評価基準だ。今まで目利きで中古エンジンが評価されていたが、統一された基準で評価できるようになった。同じ中古部品でも扱う業者によって価格が異なり騙されたりするグレーゾーンが多い。評価基準によってそれが払拭される。中古部品の業界標準を作ることで他社商品との差別化を図れる。高い品質に見合った価格が確保できるようにもなる。

2つ目はKRAシステムと呼ばれる世界と国内の自動車リサイクル業者をつなぐシステムだ。自動車部品の入庫から出庫まで1元で管理ができる。一般的に中古部品の売買は、商品の履歴が不明だ。不透明なイメージの中古部品に対して購入者は不安を感じている。しかしKRAシステムによって、エンジンの取り外し、在庫、販売の履歴を世界中で確認することができる。

3つ目は会宝産業の敷地内にある自動車リサイクル技術者を養成する国際リサイクル教育センター(IREC)。海外からの受け入れを積極的に行っている。ブラジル人やマレーシア人などの受け入れを行い教育する。「技術もそうだが日本のリサイクルの“もったいない”の精神が重要です」(近藤会長)。更に「世界の国々にリサイクル工場を作っていきたいです。途上国では多くの廃車が野積みになって放置されています。彼らが現地でリサイクル工場を作り、限りある資源を有効活用していく循環の仕組みを作るお手伝いをしていきたいと考えています」と語る。彼らが帰国後、本国で質の高い自動車リサイクルを推進することで、地球環境保全と業界の発展、更にはグローバル規模のリサイクルネットワークの構築が実現することになる。


◆自動車リサイクルビジネスの展望

近藤会長は「日本には精緻な解体業者があり、静脈産業の仕組みを日本から作ることができる。自動車リサイクルビジネスを静脈産業として社会貢献していける形にしたい」と語る。動脈産業が自動車メーカーだとするれば、静脈産業は自動車のエンジンや部品、鉄、アルミ、銅などの産業資源を回収して価値を再生する産業だ。日本の自動車リサイクルビジネスは、グローバルな視野にたった仕組みを構築し業界全体として発展していく段階に差し掛かっている。

自動車リサイクルによる中古部品流通の情報蓄積は十分ではなく課題も多く残されている。しかし自動車メーカーの努力によって高い国際競争力と品質によって、日本が優良な中古部品の発祥地であることに変わりはない。

更には日本での適正な自動車リサイクル法、リサイクル関連企業の先進技術、海外での日本メーカーの自動車の増加に伴う盛んな中古部品需要、などやり方次第では更なる需要が見いだせる。自動車リサイクルビジネスは世界に誇れる日本の産業となる大きな可能性を持っている。グローバルな視点で考えていくことが重要となる。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

【川崎大輔の流通大陸】グローバル流通が不可欠、これからの自動車リサイクル

《川崎 大輔》

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