地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」/第3回 成功へのシナリオ(事例編)

インバウンド・地域活性 コラム

地域の魅力を伝えるPR活動に注力し成功しているのが北海道の天塩町(てしおちょう)だ。2016年に齊藤啓輔氏が副町長に就任してから町が動き始めた。その「巻き込み力」と第三者の意見を聞く柔軟性、そして行動力が町や企業を活性化させた。写真は、天塩町とジョイントを組むタイの会社のスタッフと齊藤氏(向かって右から二人目が齊藤氏)
地域の魅力を伝えるPR活動に注力し成功しているのが北海道の天塩町(てしおちょう)だ。2016年に齊藤啓輔氏が副町長に就任してから町が動き始めた。その「巻き込み力」と第三者の意見を聞く柔軟性、そして行動力が町や企業を活性化させた。写真は、天塩町とジョイントを組むタイの会社のスタッフと齊藤氏(向かって右から二人目が齊藤氏) 全 4 枚 拡大写真
★地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」
第3回 「成功へのシナリオ(事例編)」

 働き方改革や兼業・副業が2018年のキーワードとなるなか、首都圏の大企業で管理職や専門職を経験した、いわゆる「プロフェッショナル人材」を地方の中小企業が採用する動きが注目を集めている。東京への一極集中や少子高齢化による地方の人口減少や、地方産業の衰退、雇用の減少などの課題が山積みとなっている中、いくつかの自治体ではプロ人材の採用によって地域の活性化に成功しており、地方創生の観点では見逃せないムーブメントと言えるだろう。
 人材採用にあたってはネットでのマッチングが飛躍的に伸びており、面接等のための遠隔地への移動といった障害も過去の話になりそうだ。
 今回の特集で話を聞くのは、地方企業と首都圏のプロ人材とのネットでのマッチングを手がける株式会社ビズリーチの加瀬澤良年さん。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や求人検索エンジン「スタンバイ」を活用して各地域の採用支援を行い、また、内閣府のプロフェッショナル人材戦略拠点事業において約40道府県のプロ人材拠点のサポートを行う中で、プロ人材と地方創生の関係を見つめてきた。人材の流動性が日本でもようやく高まりつつあるいま、何が必要なのかを3回にわたって紹介したい。最終回となる第3回はこれまでの成功事例から具体的な方法を検証、何が結果を導いたのかを考える。


■採用のために、自社でホームページを作って活動して口説く

――これまでの連載のなかでプロ人材の現在的な効能や意義についてお話しいただきました。次に中小企業が参考にしたくなるような成功事例を教えていただけますか。

まず東日本大震災から復興中である福島県沿岸部地域でうまくいった例をお話しします。ビズリーチでは経済産業省の委託事業として、2016年6月からその地域の企業の採用支援を行っています。福島第一原発事故の被災地域である福島県の12の市町村ではようやく避難指示が解除されはじめ、事業を再開する企業も増えてきました。しかし震災以降、その地域の方々は避難されていますので働き手がいませんでした。この委託事業は、福島県で被災されて事業再開を目指す企業を対象に従業員の確保を目指すという復興の重要ミッションを担っており、福島の経済復興を願う想いからビズリーチも20人を超える従業員で取り組んでいます。これまでの採用支援の結果、2017年だけでも250人採用でき、累計では340人を超えました。

――340人とは驚きです。

この数字には正社員だけでなくアルバイトも含んでいますが、地域における採用、就業率の向上が確実に進んでいることを表しています。この地域の企業は避難地域のため、7年間、採用どころか事業を営むこともできませんでした。採用できなかったこの7年は、採用業界において非常に多くの変化と革新があった時期でもあります。具体的には、求職者が就職活動をする際に使用するデバイスは、紙からパソコンへ、そしてモバイルへとものすごいスピードでシフトしていきました。つまり、7年間採用を行っていないということは、この流れを経験していないということです。そうであれば、そのブランクを逆手にとって、地域全体でインターネットを積極的に活用した採用を行う、採用最先端地域を目指していこうと考えています。

私たちから新しい採用手法を提唱させていただき、今ではこの地域の大半の中小企業や小規模事業者が情報拡散・採用のためのホームページを持ち、各社と連携し、地域における最大の求人メディアを形成しています。しかも、パソコンだけでなく、スマートフォンにも最適化した採用ホームページを作っています。ちなみに、このように採用活動において地域全体でインターネットを積極活用しようという例は全国でもまだ珍しいことです。

ホームページの制作において、私たちが完全に代行するのではなく、企業の方々と話し合いながら共同で作っています。なぜかというと、採用ホームページを自らが作成する過程で、自社の良さやPRポイントが何かについて社員全員がわかってくるのです。自分たちで採用ホームページをつくれば、採用のプロフェッショナルでなくても自社の特長をうまくPRできるようになります。「ホームページを自ら作る→自社の良さを候補者となりうる人たちに能動的にPRする→候補者を全員で直接口説いて採用する」という採用活動を実施しています。また、社員全員が能動的に、積極的に採用に取り組むことで社員紹介が増えていきます。いわゆるリファーラル・リクルーティングです。

これらの採用手法は「ダイレクト・リクルーティング」と呼ばれます。「ダイレクト・リクルーティング」とは採用活動において、企業があらゆる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用手法で、海外では一般的なのですが、この数年、日本でも広がりつつあります。福島県沿岸部地域では、この最先端の手法を地域全体が短期間で取り入れ実践することに挑戦しています。

おかげさまで福島では400社以上が取り組み、上記の成果が出ました。これに続けと、北海道や青森県などでも同様の施策を始めることになりました。このスキームを実行する自治体は増え続けていて、現在では約20の自治体が同様の取り組みを進めています。

今では、私たちがお手伝いせずに、ホームページをリニューアルしたり、独自のイベントを行う企業も現れ、地域主体の採用が進んでいます。

――「やればできる」「自社でやるべきだ」というようなメッセージを感じます。

誰かに頼んで終わりではなく、社員全員でホームページを作り、採用活動を行い、候補者を口説き、応募者のために新しい仕事もつくっていく。そして地域をあげて積極的に人材確保を行う。今、福島で私たちがお手伝いしているのはその第一歩ですし、福島で成功することは他の地域でできないことはないという証明になるのでは、と考えています。


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《HANJO HANJO編集部》

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